真鍮の知識

ブラス(真鍮)とは:

銅と亜鉛の合金で混合比率が30−40%含まれ、これに対してブロンズ(青銅)は銅と錫のことです。

銅と亜鉛の合金ですので、その含有率によりブラスの性質が銅に近くなったり、亜鉛に近くなったりします。

銅の性質に近くなると、高価、柔らかい、弾力がある、色が赤色になる、傷つき易い、変色し易く、反対に亜鉛の性質に近くなると安価、固い、もろい、色が青金になる、傷つきにくい、変色しにくくなり、亜鉛の含有量の多いブラスの代表としてはイタリアのブラスがあげられます。

弊社では、手に触れた時の感触の柔らかさや、体温の伝達速度を重視し、銅の含有量の多いブラスを原料に選んでいますので、傷つき易く、変色し易いという弱点も併せ持っています。

日常のお手入れは、仏具用の真鍮磨き、金管楽器用の研磨剤等をお使い下さい。クレンザー、ナイロンたわし等の目の粗い研磨剤は使用しないで下さい。5年、10年とお手入れをして戴くと、ご購入当初より美しくなり、ブラス本来の美しさが出てきます。

日常のお手入れが面倒な場合は、1度綺麗に磨いた後、クリアーラッカーのスプレーをかける方法もあります。

 

ブラスのさび(緑青)について

1955−1965年代にかけて、緑青有毒説が流布しクレーム問題が頻発しましたが、1984年8月7日厚生省見解の結論をいえば、緑青で中毒を起こしたと言う報告は見当たらないし、発ガン性も認められないので毒性があると考える必要はないであろうということです。但し、毒性がないからといって緑青をどんどん摂取しなさいといっているわけではなく、本来的には、緑青をわかすような家庭というものは、衛生的に問題があるので、銅食器等はきちんと手入れをしなさいということのようです。

 

微量銅の殺菌作用

科学的に証明できないような微量の銅イオンが示す殺菌作用で、1893年に発見され、電車の吊り手、銅貨、病院のドアーノブ等で多く証明されており、国際銅研究会、東京都立衛生研究所、京都大学等での研究報告があります。

 

成分

銅と亜鉛の合金

不純物として、微量の鉛、鉄、錫等の混入が許容される。

 

比率

各国の基準、用途により銅と亜鉛の混合比は違う。

 

判定

正確な成分分析はイオン検出装置による。

銅と錫の合金である青銅と混同され易いが、青銅は鉄器が出現するまでは、武器に使用された程の硬度を持つが、真鍮にはそれ程の硬度はない。

肉眼による判定は、色調、硬度の感触によるが、錫の混合比率により、非常に真鍮に似た青銅もあり、難しい。

 

特質

耐食性、加工性に優れている。

 

歴史

その海水に対する耐食性の良さから、大航海時代に船舶用金物として、実用的金物としての地歩を固め、特にイギリス無敵艦隊の軍艦の儀装品、士官の居住区の家具、建具等の金物として、大きな発展を遂げ、近年ステンレスにその座を明け渡すまで、ねじ、釘等の小さな物に至る迄船舶用金物として王座をしめてきた。

現在も、銃弾、砲弾等の武器には大量に使用されていて、素材価格は世界各地で戦争の有無により大きく変動する。

また、加工性のよさ、素材の美しさから、住宅用窓金物、ドアーかなもの、家具金物等、各国、各時代により様々な様式を持ち発展しているが、起源を辿れば、かっての船舶用金物に行きつく場合が多い。

 

弊社の取り扱っているデザインは、アーリーアメリカンスタイルと総称されているものですが、独立前のアメリカはイギリスの植民地であった地方、フランスの殖民地であった地方により宗主国の影響を強く受けている物、入植者の出身国の影響を受けている物、或はまた、各国、各時代に共通で、デザインの起源を辿れば十字軍の遠征に辿り着く様式等、一概には述べられないので、弊社では品揃えの基準として:

     イギリスのチューダー、エドワード、ジョージ,ヴィクトリア王朝、またフランスの田舎で、贅肉をそぎ落としながらシンプルなデザインに発達したフレンチカントリースタイルと総称される物。

     軍艦、捕鯨船に使われていたもので、海のイメージが排除されている物。

     現在に至る迄、ごく当たり前に生産され、ごく当たり前に、生活の道具として使われ続けている物。

     比較的日本の住宅事情、デザインに融合し易いデザインを持つ物。

     日本人の価格感覚に合致した物等を選択の基準にしています。

 

 

フックの出自に就きましては、マーブルフック(2頭、3等)はヴィクトリアンスタイル、ハート座フック(3−1/’’)は捕鯨船で使われていた物であることは判っていますが、他のフックは船舶で使用されていた物という事迄は判っていますが、軍艦か捕鯨船か、或は交易船かは判明していません。

鋳鉄フックは船舶ではなく、納屋用で、住宅用ではありません。

また、デザインの出自も、イギリスのノーフォークスタイルであるのか、サッフォークスタイルであるのか、或はスペインの影響を受けているのかは不明です。

弊社取扱のブラスウェアーと同じデザインの物は西洋骨董店でも売られていますが、弊社での取扱品はアンティーク商品ではなく、レプリカに近い物です。

映画「風とともに去りぬ」のヒロイン,スカーレット=オハラの実家、タラの家や「真昼の決闘」でゲイリー=クーパーが演じた保安官がバーボンをショットグラスで煽ったサル―ンや保安官事務所の中で使われていた家具や建具の金物を思いだして下さい。

名画と呼ばれる映画の小道具はしっかりと時代考証が行われ、その時代に使われていた物が正確に復元(レプリカ)されていますが、ここに揃えられたブラスウェアーは復元された物ではなく、当時から全く同じデザイン、サイズで作り続けられている物ばかりですので、そういう意味ではレプリカとは多少異なります。

戦後、私達日本人は生産効率のみを追及し、高度な経済成長を成し遂げました。生産効率とは工場がいかに安く、大量に、早く生産するかという事のみを追求し、生産されたものを使う側の感性を全く無視したものです。そしてその一方では、日本古来の職人達が時代遅れといわれて、多くの分野で姿を消していきました。今の日本で50年前と同じデザイン、品質のものが、骨董屋以外の店で手に入るでしょうか。

しかし、生産効率を追求して産業革命を成し遂げたイギリス、或は大量生産、大量消費の旗振り役のように言われるアメリカでも、本当に良い物はしっかりと、きちんと、何百年も残されていて、当たり前のようにごく普通に使われています。

日本の乗用車メーカー達がスーパーコンピューターを駆使して、何百億円もの開発費をかけても、アストンマーティンやポルシェを越えられない理由がこの辺りにありそうな気がします。

弊社のブラスウェアーは、お客様からよく「見た目に優しい、触れた感触も良い」と言われますが、これらの品が誕生した背景は、これらの品々を使用する側である、当時圧倒的な権力を持っていた階級が、生産効率や価格を全く無視して、自分達が使用するのに一番良い物を作らせたからです。日本では大名道具に近い、誕生の背景があります。

ブラスウェアーは材料費、製造コストが高いので、贅沢で高価な物ですが、欧米では中古品のマーケットがある程大切に使われています。

今、日本で普通の物を買って、30−50年後に、跡形も無くしてしまうのも一つの選択ですが、多少高価でも30−50年後、家の改築、家具の買い替えの時「お父さん、お母さん、お爺ちゃん、お婆ちゃんは、本当に良い物を使っていたんだなあ。金物だけでも取っておいて付け替えよう」と思われれば、それ程高い物ではないと思います。必ず50年後迄愛着と誇りを持って、使い続けていただけると信じています。

弊社で輸入を始めてすでに20年以上になりますが、初期のユーザーから、「家を改築したが、ブラスウェアーは古い家の物を全て取り外し、磨き直して新しい家に使った」とか、「古い家を壊したので、ブラスウェアーは全て取り外して、フリーマーケットに持って行ったら、全部売れた」というようなお便りをいただいています。

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